インタビュー
フロアマスターとして学園に帰ってきた卒業生に聞きました
有馬 尚成 フロアマスター
海陽学園1期生(2012年卒)
東海旅客鉄道㈱
海陽学園では、ハウスを巣立った卒業生が賛同企業に就職し、フロアマスターとして学園に戻ってくるという好循環が生まれています。在校生にとってまさにロールモデルとなっている1期生のフロアマスター(FM)にお話を聞きました。
まずは自己紹介をお願いします。
海陽学園1期生の有馬尚成です。2012年に海陽学園を卒業して、10年ぶりにFMとして戻ってきました。海陽学園の賛同企業であるJR東海に就職し、大阪・東京で営業を担当していました。JR東海からは毎年FMを派遣していますので「母校に戻る可能性もあるな」と意識はしていましたが、まさか本当に帰ってくるとは思ってもみませんでした。FMとしては、主に4・5年生(高校1・2年生)を担当しています。自分自身がこの学園の卒業生だからこそ、生徒の気持ちもよくわかりますので、生徒の考えを第一に尊重しながら業務に励んでいます。
在学時はどのような生徒でしたか。
バドミントン部に所属していて、部活を一生懸命頑張っていました。私自身は、良く言えば自由にのびのびと、悪く言えば意志が弱く易きに流れてしまうタイプでした。そんな性格でしたので、部活にしてもハウス生活にしても、何事にも情熱をもって真剣に取り組む同級生たちと寝食をともにできたことはとても貴重な経験でした。担当いただいたFMの方々からは自己管理の必要性について何度もご指導いただきました。繰り返し教わってきた「自律」や「行動に移すこと」の大切さを心から実感できるようになったのは、卒業後、大学生や社会人になってからのことですが、あの時の教えが今の自分の礎になっていると感じています。
FMとして心掛けていることはありますか。
生徒の成長を最大化させることです。生徒は6年間を通して成長していきますが、FMとして一緒に過ごせるのは基本的に1年間という限られた時間です。その1年で大きく成長する生徒もいれば、そうでない生徒もいて、それは成長のタイミングがそれぞれ異なるからだと考えています。FMが無理やりにでも成長させようとして自分の考えを強引に伝えても逆効果になってしまいますので、それよりも生徒と日々の生活を共にする中で、少しの変化も見逃さないように意識しています。それがプラスの変化であれば、自分自身の経験を踏まえながらその変化が最大化するようアドバイスしますし、マイナスの変化であれば、すぐにその芽を摘み取るようにしています。一番身近にいる存在だからこそ、急に挨拶しなくなったり、目を合わせなくなったり、部屋が汚くなったりと、彼らなりのサインを見逃さないことが重要だと思っています。
生徒と接する中で印象に残っていることはありますか。
5年生(高校2年生)で志望校に迷っている生徒がいました。頑張れば狙える大学と、今の成績であれば順当に合格できる大学です。相談された当初は、本人は仮に前者に合格したとしてもその選択が正しいと言えるかどうかは分からず、そこで頑張るくらいであれば後者の方がよいのでは、と決めきれずにいたようです。どちらが正解、といえる世界ではないですが、私の経験を踏まえながら、高い目標に向かって頑張れば結果がどうであれその経験は次の挑戦へと繋がり、高い目標であるほど将来の可能性も広がることを、ことあるごとに伝えてきました。決断に時間はかかりましたが、本人から前者を目指して努力することに決めたと報告を受けたときは本当に嬉しかったです。一人の人生の大きな選択に関われたことを、誇りに思います。
最後に、あらためて海陽学園の魅力について教えてください。
なんといっても、ハウス生活です。尊敬できる人も、性格が合わない人も、皆が同じ屋根の下で6年間生活します。一般的な中学、高校や大学では、気の合う人とだけ付き合っていくこともできますが、海陽学園ではそうはいかないのです。どうすればうまく付き合えるか、集団の中で自身がどの役割を担うべきかを考え抜くことで、社会で必要な素養を身につけられるのが、海陽学園の最大の魅力です。また、ハウス生活は、FMにとっても大きな成長の機会になっています。ハウスで鍛えられた生徒たちは、相手が大人であっても納得がいかなければとことん反発し、納得のいく説明を求めてきます。一方的に言い聞かせるのではなく、どうすれば彼らが納得感をもって主体的に行動できるのか、日々考えながら接することで、組織や人の動かし方を学べたように思います。他社から出向しているFMとともに、いかに生徒たちを導いていくか熱く語り合った経験は、何物にも代えがたい財産になっています。